「そこでお前さん、―――――学園祭期間中だけ、立海のマネージャー代理やらんか?」
思わず固まってしまって声が出ない。
仁王く・・・雅治くんのことはちゃんから聞いていた。
幼馴染に銀髪の子がいるって。
だから見た瞬間、もしかして・・・と思った。
銀髪なんて滅多にいるもんじゃない。
案の定困っていた私を助けてくれたのはちゃんの幼馴染の雅治くんだった。
ちゃんからは・・・とにかくヤル気がないっヤツだって聞いてたっけ。
それで何考えてるか分からないらしい。
おまけに銀髪とくればあまり良い人ではなさそうだと勝手に思っていた。
知らぬ間に私の隣に立ち
氷帝レギュラーにやんややんやとせかされ買いにきた大量のスポーツドリンクを軽々持ち上げ
どことも言えぬ独特の方言で話しかけられ
見上げればふわっと優しく笑いかけてくれた
なんだ、ちゃん。
言うほど変な人じゃないじゃない。
むしろ優しくて頼りに出来るいい「お兄さん」って感じかな。
・・・同い年にお兄さんは失礼だけど。
「大丈夫か?」
「あ・・・・・・・ご、ごめんなさい!ぼーっとしちゃって・・・。」
あまりに急な質問だったんだろうか。
それでも予想していた通りの反応に笑わずにはいられない。
「で?」
「えと・・・そ、それは・・・・・・。」
「なんじゃ、助けてくれんの?」
「いや、その、私一応氷帝マネージャーだし・・・・・。」
「だってウチのマネージャーじゃ。」
「えと・・・そうだよね・・・あはは・・・・・。」
可愛い。
久しぶりに思った。
ああ、完璧一目惚れじゃ・・・・・。
詐欺師のオレがね・・・。
まあそれはさておき。
問題はここから。
がそう簡単にイエスと答えるわけがない。
大体予想はつく。
自分じゃ決められないは誰かに相談するだろう。
ククッ・・・早々お出ましってわけじゃな。
「と、とりあえず部長に相談してみるね。」
「・・・まあええじゃろ。良い返事期待しちょるよ。」
「そ、そういえば雅治くん、氷帝に用事あったんだよね?いいの?」
「あー・・・忘れた。また思い出したらお邪魔させてもらうとするぜよ。」
「そっか・・・。今日はなんだかありがとね。」
気付けばすでにコートについていた。
鈍い音を立ててケースを下に置く。
1ケースでそれだけ重かったのなら2ケースなんてムリな話だ。
ほんにオレがいなかったらどうしたんじゃと思う。
「部室に運ぶんか?そこまで持ってっちゃるよ。」
「いや!ここまで運んでくれたんだもん、悪いよ。
部員の子に手伝ってもらうから大丈夫!なんだか本当ごめんね。」
ほらまた。
さっきと同じような笑顔で笑いかける。
いかん。心臓がうるさい。
何やっとるんじゃ仁王雅治。
「ええち。その代わりウチで働いてもらう。」
「えええ!ちょ、ちょっと待ってね・・・。」
「ククッ・・・おー、そうじゃ。連絡してもらわんといかんき。アドレス交換しよ。」
「え?あ、うん!」
登録された画面を見て思わず口元が緩む。
のヤツなんでもっと早く教えてくれなかったんじゃ。
「部長さんに話したら連絡して。」
「あ・・・うん。」
「ん、じゃあな。」
「本当、今日はありがとう!気をつけて帰ってね。」
よしよし、ここまでは順調。
一応念も押しておいた。
これだけ言っておけばの性格上、連絡してくるだろう。
の反応からして俺に悪いとは思ってるが、かといってマネージャー業を放棄する気にもなれないんだろう。
ククッ・・・ほんに跡部の反応が楽しみじゃ。
跡部景吾。
氷帝テニス部200人の頂点に立つ男。
あっちの噂も絶えんがテニスの噂は神奈川まで届くほど。
さーて、とはどういう関係なんかの・・・。
は幼馴染と言っていたが怪しいもの。
少々天然がかった子は守ってあげたいと思うのが男の性。
おまけに可愛いときた。
はそういうのうとそうじゃが・・・。
わさわざマネージャーにしているあたり、気があったりなかったり。
そうなると厄介やき。
まあそれもこれもからの連絡で分かる。
ククッ・・・面白くなってきた。
当分はこれで遊ばせてもらうぜよ。
[ 戻る ]